ウォルマートがFY22 Q3の決算資料を発表

11月16日にウォルマート(Walmart)の2022年1月期第3四半期(21年8−10月)の決算を発表しました。

この原稿を書いているのは、東京のコロナの感染者数が二桁台に落ち着き、アメリカではホリデーシーズン商戦が始まったくらいの時期です。ニュースでは、アメリカの人々が店頭で買い物を楽しむ姿が流れ、私たちは日常に戻りつつあるのだなとしみじみと実感してしまいました。

しかし、アメリカだけではなく日本にも影響を及ぼしているのが、物流の問題です。現在アメリカでは、「商品を店頭で見かけたらすぐに購入してください」「売り切れのためECサイトで購入してください」といった注意書きが店頭に貼られている状況だそう。

この騒ぎは、商品の生産が追いていないのではなく、商品はロサンゼルス港に停留している船のコンテナの中にあるにもかかわらず、ドライバー不足による物流の停滞が原因とのことです。実際に港の様子を動画で見ると、入港できない船が港をぐるりと囲んでいる異様な光景があり、物流の重要さを改めて実感しました。また、マイケル・サンデル教授が提唱している現代社会が抱える「エリート主義」への警鐘を思い出し、「エッセンシャルワーカー」の社会的存在意義の高さが浮き彫りになったニュースであると感じました。今アメリカでは様々な要因によってドライバー不足がなかなか解決されず、年間で1,000万円以上の収入を得られることもあるらしいです。

今回はそんなホリデーシーズン商戦が始まったアメリカ最大手小売企業の「ウォルマート」に焦点を当てたいと思います。

目次

私たちは小売企業でなく、テクノロジーの企業である

「私たちは小売企業でなく、テクノロジーの企業である」

と宣言しているウォルマート。コロナ禍からの復調の兆しは見えたのでしょうか。ウォルマートの決算内容から今後の小売企業のテクノロジーとの向き合い方や存在意義、復調トレンドなどを学べたらと思います。

ウォルマートはアメリカの大手小売企業

ウォルマートについては皆さんご存知かと思いますが、改めて企業の概要を説明します。最新の決算資料によるとウォルマートは世界24カ国で展開している世界でも大手の小売企業です。日本では西友のイメージが強い方も多いのではないでしょうか。今年の春にKKRと楽天がウォルマートから西友の株式を取得しました。

キャッチコピーは「Everyday Low price」。そのキャッチコピーの通り、アメリカの中〜低所得者層をターゲットとしているようです。私自身はアメリカには観光でしか訪れたことがなく、住んだことがないのですが、実際に住んだことがある人から聞くと、ホールフーズ・マーケットなどと比較して、客層が違うのが一目瞭然だそうです。

Amazonに対抗できる唯一の小売企業との呼び名も

ウォルマートと言えば早い段階から、アメリカのIT企業「コズミックス」を巨額の3億ドルで買収したりと、Amazonに対抗すべく行動した企業の一つではないでしょうか。

コズミックスを筆頭に、自分たちがAmazonと比較して技術的に勝ち目がない・苦手な領域を補うためにIT企業を次々と買収しています。さらに面白いのは自社内でも開発部隊「Walmart Labs」という子会社を創設し、他者と協業して完全自動運転トラックによるルート配送を開始するなど、先進的な取り組みをしています。

気になる決算内容は?リアル店鋪には消費者が戻りつつある?

では、さっそく決算内容を見てみましょう。売上は1,405億ドル(前年同期比で4%増)、純利益は31億500万ドル(前年同期比で40%減)という結果になりました。売上は伸びたが純利益が下がったということですが、物流が逼迫したことが原因とのことです。ウォルマートでは、ウォルマート傘下の会員制量販店「サムズクラブ」という業態があり、そのサムズクラブは既存店の前年同期比で売上高が14%増加したとも言及されています。

またデジタルにも注力しているウォルマートですので、EC売上系の数値も気になるところですが、今期のEC売上の伸長率は前年同期比で8%増という一桁台の増加率となりました。売上の増加率よりも良いですが、結果が良かったかどうかは判断がしかねます。例えば、コロナのパンデミックという文脈から考察すると、もう一年遡った数字を見ることも重要です。ということで、2021年8−10月期からの伸長率で見てみましょう。すると、なんと2年間で87%もECの売上が伸長していることが分かります。

EC売上の伸長率(前年同期比)

2021年8−10月期2022年8−10月期
ECの売上の伸長率79%増加8%増加

リアル店鋪での消費活動は復調しはじめていますが、今後Amazonと対抗していくためには、EC伸長率はさらに促進したいところではあります。

アメリカの50%以上の世帯にアクセス可能に。ピックアップと即日配送サービスが拡大中

また、決算資料の中で気になったのが、ピックアップと即日配送サービスの対応店鋪の増加数です。ピックアップサービスは事前に注文して、商品を受け取れるというもの。もう一つの即日配送サービスはその名の通り、注文した商品を即日配送してくれるサービスです。以下が前年同期と比較した各サービスに対応している店鋪の数です。2021年10月31日時点でのアメリカ国内での店鋪数を調べて見ると、ウォルマートが4,742店鋪、サムズクラブが600店鋪、合計して5,342店鋪となり、ピックアップと即日配送のカバー率の高さが分かります。900の街(原文ではCityと書かれていました)で展開され、なんとアメリカの50%以上の世帯がアクセス可能な規模までに成長しているそうです。

ピックアップと即日配送の箇所・店舗数(昨年対比)

2021年8−10月期2022年8−10月期
Pick up (locations)
ピックアップ(ロケーション数)
〜3,600〜4,300
Same day delivery (stores)即日配送(店鋪数)〜2,900>3,300

小売企業がDXを加速していく世界には何があるのか

今回は小売企業のDX化の雄であるウォルマートの決算資料を読みました。誰もがウォルマートのようにIT企業を買収できるような金銭的体力があるわけでもありませんし、ましてや投資家が多額の金を投資したくなるような先進的・先鋭的な技術を持っているわけでもありません。その中で小売企業がどのようにデジタル化していけば良いのか、まだ答えは私のなかで見つかっていません。そしてIT企業 vs 小売企業のような対立構造が正しいとも思ってはいません。でも一つだけ言えるのは消費者のニーズに答えることが肝要であり、無作為にDXするものではないと考えます。ウォルマートや中国などの世界の市場の事例に目を向けて、勉強していきたいものです。

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