修理する権利(Right-to-repair)が2023年7月からニューヨーク州で施行開始

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なぜスマートフォンは自分で修理できないの?「修理する権利」を叫ぶ声が拡大

「デジタル公正修理法」という法律を聞いたことはありますか。今年2023年7月1日からアメリカのニューヨーク州で施行が始まる法律です。通称「修理する権利(Right-to-repair)」とも呼ばれています。2022年の12月にニューヨーク知事によって署名されました。

スマートフォンのバッテリーだけ交換したい!

私がこの法律を知ったのは、自分のスマートフォンのバッテリーの減りが急に早くなったから。モバイルバッテリーなしでは外出できなくなり、荷物が増え、しかも重くなり、「本末転倒だわ!」と思い、修理について調べてみました。日本だと購入したキャリアやメーカーでバッテリー交換ができるみたいです。私はPixelユーザーでかつSIMフリー端末なので「Google Pixel の認定修理担当パートナー」で修理するのが良いみたいですが「iCracked」というパートナーしかいないよう。

Google Pixelヘルプ:Google Pixel の認定修理担当パートナーを探す https://support.google.com/pixelphone/answer/10227672?hl=ja&ref_topic=7223822&sjid=14820943365792482162-AP

「他の生活用品は自分で修理できるのに、なぜスマートフォンは自分で修理できないのよ!」と疑問に思い、見つけたのが「修理する権利(Right-to-repair)」。

「デジタル公正修理法」とは?

「修理する権利」は「デジタル公正修理法」という法律で、アメリカのニューヨーク州では2023年の7月1日から施行されます。アメリカではそれ以外にもカリフォルニア州、コロラド州、マサチューセッツ州など20以上の州が議論しています。
(参考情報 https://www.repair.org/stand-up

これらの法律は、一般的には消費者の権利を保護し、製造業者による修理への制約を緩和すること、さらに年々増加傾向にある電子機器の廃棄物に歯止めをかけることを目的としています。また、環境問題意識の強いヨーロッパでは、は1990年代から交換用の部品の市場自由化が議論されており、修理する権利についての意識が高まっていました。そして、アメリカよりも早く、2020年11月に欧州連合の主要機関の一つである欧州会議は、消費者の「修理する権利」を保護するための決議を採択しています。

電子機器の廃棄物、5年で2割増

国際連合が2020年7月に発表した「The Global E-waste Monitor 2020」を見ると、データが確認できる2014年の4440万トンから増加傾向は継続しており、2019年で5360万トンとなっています。2014年から5年間で21%増加したということになります。この国連の調査結果によると、2030年までに世界で発生する電子機器廃棄物は7,400万トンまで増加して、わずか16年の間で倍増するとされています。この調査は2020年7月時点のもので、 コロナの影響は反映されていませんが、この時点で国連でも最も増加率が高いのは、家庭廃棄物。レポートには「小型IT・通信機器の伸びは緩やかで、スクリーンとモニターに至ってはわずかに減少している」と記載されていますが、コロナ禍によって強制的にリモートワークへと切り替わったワークスタイルは電子機器廃棄物量にも影響を与えているのではないでしょうか。リモートワークへ突入したタイミングで、自分のワークスペースをこぞってSNSなどで共有して、DIYのコツやハックなどを共有するトレンドがありましたよね。大型曲面ディスプレイやデュアルディスプレイや昇降式デスクを披露したりしていました。しかし、現在の日本ではオフィス回帰の傾向が強まり、今や出社率は7割まで戻っているそうです。私はフルリモート勤務のため、まったく実感はないのですが…。たまに乗る電車の混雑具合にびっくりします。オフィス回帰した人々は、自宅に整備したワークスペースをどうするのでしょうか。ハイブリッド出社であってもフル装備は不要というような人も出てくるのではないでしょうか。

「修理する権利」はアメリカやヨーロッパだけの話ではない

「修理する権利」はヨーロッパやアメリカで法律や規制の導入・検討がなされていると前述しましたが、私たちが住むアジア圏でも真剣に考える必要があります。というのも、先程の国連のレポートでは、2019年の電子機器廃棄物の発生量の内訳で最も多かった地域がアジアで、ついで、アメリカ大陸、ヨーロッパという順になったと報告されているからです。もちろん人口や経済の発展フェーズにもよりますが、私たちも修理する権利について考えないといけないなぁと思いました。

スマートフォンの買い替えサイクルは長期化傾向、エコ志向も「修理する権利」を後押し

日本においてはスマートフォンの買い替えサイクルは、長期化傾向にあると聞きます。スマートフォンの機種代金の高騰や、携帯キャリアの2年縛りがなくなった結果だと推測します。巨大化するスマートフォンではなく、小さいサイズのスマートフォンを使いたいから機種変しないという知人もいたりします。「このスペックでも充分だし、壊れていないなら長く使いたい」という人が増えたのではないでしょうか。私が電子機器廃棄物について調べて驚いたのが、「スマートフォンはリサイクル回収に出しているから、何ら問題ないのではないか」という思い込みが覆ったこと。スマートフォンはリサイクル回収に積極的な印象ですが、実は部品ごとに分解し、分別することは至難らしく、時間も技術も必要だそう。実際は粉砕処理する場合が多いそうです。

「修理する権利」が認められれば、「一つの商品を長く大切に使いたい」という消費者の声も叶い、電子機器に余分な支払をしなくて済むでしょう。しかし、良い面だけでなく、複雑な電子機器を素人が修理することによる故障や製品の安全性、事故の可能性などの危険性をはらんでいます。

Googleでもそのようなことを考慮し、「スマートフォンの修理については、関連する技術的な経験のある方のみ行うことをおすすめします。」との記載があります。

純正のスペアパーツを探す
純正の iFixit による Google パーツを入手して Google Pixel を修理することもできます。スマートフォンの修理については、関連する技術的な経験のある方のみ行うことをおすすめします。

https://support.google.com/pixelphone/answer/9004345?sjid=14820943365792482162-AP

想像に容易いですが、今回のニューヨーク州の法案可決でも、メーカーや修理企業からの反発が強かったそうです。

修理のしやすさも考慮した製品づくりが必要な時代へ

消費者が修理・分解できないような製品も多かったようですが、「修理する権利」の声が大きくなった昨今、製品開発の設計にも影響がありそうです。メーカーにとっては収入源である電子機器の買い替えサイクルは短い方が良いですよね。ある一定期間になると製品が壊れることが多いメーカーは「〇〇タイマー」のように揶揄されていましたが、今後はそうもいかなさそうです。製品だけでなく製品に付随したサービスして顧客を囲い込んでいるメーカーは良いですが、そうでないメーカーにとっては苦しい環境になっていきそうです。

Header photo by Barrett Ward on Unsplash

この記事を書いた人

Riliのアバター Rili プロダクトマネージャー

都内在住の30代女性・IT企業勤務。サービスを作ることが好きなリモートワーカー。「人生はグラデーション」を掲げ、自由な働き方と生きやすい社会を模索する日々を綴ります。

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