ECの返品率が上昇?インフレが与える影響とは?

小売業界にとって2020年はコロナ禍によって多くの困惑と試練、驚きをもたらされた年で、2021年も同様でした。そして今2022年は、インフレや原料高といった世界的経済の影響を受けています。混乱したサプライチェーンは立て直しを図っています。そんな世界経済がアパレル業界のECに影響を与えていることがわかる業績速報がありました。

イギリスを拠点とするアパレル企業「エイソス(ASOS)」は、6月16日に2022年3-5月期の業績速報「Trading Statement for the three months ended 31 May 202」を出しました。(PDFはこちら

この業績速報の冒頭で、

  • 売上総利益は増加
  • 売上高は消費者のインフレ圧力を反映し、英国およびヨーロッパで期末に向けて、返品率が大幅に上昇し、影響を受けた

と記載されています。インフレーションの影響で返品率が高まっていることを、この速報中でなんと8箇所も(!)言及していることが印象的でした。

インフレーションの影響で、顧客の心理が変化し、消費行動に影響を及ぼしているという事実と、この消費行動がいつまで継続するかは時期尚早だが、影響を最小限に抑えるために迅速な措置を講じていくと言及しています。外出や慶事、イベントなどの機会が増え、需要も増加した一方で返品率の上昇により、一部相殺され、売上高が前年同期比で微減したとのことです。一旦返品率はどれくらい上昇したのか、とても気になるところですが、その点は明記されていませんでした。

EC事業者にとって悩みの種の一つといえば、商品の返品率。返品や交換回数が増加すれば、倉庫や配送コストへの影響だけでなく、販売の機会損失やマークダウン商品の増加などの労働効率の低下も含まれます。

アパレルはそもそもが在庫コントロールが難しい商材ゆえ、在庫過剰や返品対応は企業にとって大きな問題です。返品対応が利益を逼迫している現状に対して、最近では、返金手数料を有料にしようという動きも広まってきているようです。返品に対して抵抗感がある国とそうでない国があるようで、グルーバルで展開しているアパレル企業にとっては喫緊の課題と言えるでしょう。

返品送料無料は、「エイソス(ASOS)」だけでなく、「ザラ(ZARA)」や「ユニクロ(UNIQLO)」、「シーイン(SHEIN)」なども実施しています。また、「ゾゾタウン(ZOZOTOWN)」のように送料無料を撤廃し、送料を値上げするなど、各社が工夫しています。

返品送料無料の取り組みは、購入者事由による返品場合のみ(注文間違い、イメージ違い、サイズ違い、ユニクロ不備の場合以外)適用しています。

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返送せず返品可能?!アマゾンがはじめた「Keep it」

一方アマゾンは、商品を返送せずに返金対応をしてもらえる「Keep it」という取り組みを始めたそうです。この「Keep it」は消費者から返品の申し出があった場合、商品の返送は不要で、商品代金を返金してもらえるという仕組み。

How to Get an Amazon Refund Without Return

ただし、これはすべての商品が対象ではなく、ガイドラインに合致する場合のみ適用されるようで、例えば、家具やキッチン家電、インテリア、ベビーチェア、歩行器、ベビーカーなど返品送料は高いにも関わらず、低価格な商品がメインになるのではないでしょうか。要するに「商品価格<返品にかかるコスト(人件費や倉庫代等)」 で判断される可能性が高いと思われます。

まとめ

返品は返品コストだけでなく、保管費用にも影響を与える

「ターゲット(Target)」や「ウォルマート(Walmart)」、「ギャップ(Gap)」、「アメリカンイーグルアウトフィッターズ(American Eagle Outfitters )」 などの大手アパレルチェーン店が、さまざまな商品が過剰在庫であると決算報告で言及しています。その結果、過剰在庫を保管するために膨大な費用がかかり、そこに輪をかけて返品率が上昇するとコストがかさむという負のスパイラルの状態に。アマゾンのような取り組みは、過剰在庫で悩まされている小売業界の現実を鑑みると他の企業でも採用されていくのではないでしょうか。

この記事を書いた人

Riliのアバター Rili プロダクトマネージャー

都内在住の30代女性・IT企業勤務。サービスを作ることが好きなリモートワーカー。「人生はグラデーション」を掲げ、自由な働き方と生きやすい社会を模索する日々を綴ります。

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