Netflixで「RGB 最強の85歳」を観ました。
アメリカ合衆国で歴代2番目の女性判事、そして最高裁判事
RGBとはルース・ベイダー・ギンズバーグ氏の頭文字。
アメリカ合衆国で歴代2番目の女性判事、そして最高裁判事という輝かしいキャリアを持った彼女の人生のドキュメンタリーです。昨年の2020年9月に膵臓がんの合併症により、亡くなったギンズバーグ氏。その晩年の人気ぶりは彼女のパロディが番組で流れたり、オリジナルグッズができてしまうほど。
まず最初に感想を述べると、本当に良かったです。自分の意見を論理的に、情熱的に、かつ感情に流されずに推進する彼女の判例や至言の数々には勇気をもらえます。現代日本の社会構造や会社のヒエラルキー、女性活躍推進法等の理想と現実にモヤモヤしている女性たちにぜひ見てほしいなと思いました。元気とパワーをもらえるこのドキュメンタリー。さぞ輝かしいキャリアを歩んできたのかと思いきや、ギンズバーグ氏の人生は、まさに女性差別(ときには男性差別)との戦いの連続でした。
1950年代当初、ハーバードのロースクールの女性比率は2%
このドキュメンタリーは彼女の学生時代から始まります。当時のハーバードのロースクールの生徒の女性比率は、なんとたった2%。男性500人に対して女性が9人しかおらず、図書館に入ろうとしても「女性だから」という理由だけで、職員から入室を禁止されてしまう時代だったそう。「まともな女性は声をあげないと思われており」「萎縮してしまうから」という理由で、授業中に教授から指されて回答する機会ももらえなかったそうです。
そして、さらに驚きなのはギンズバーグ氏はロースクールに通いながら、出産・育児をこなし、さらに夫であるマーティンが在学中にがんに罹ってしまい、彼の看病や勉強の面倒までしていたこと。当時の睡眠時間は2時間しかなく、そのおかげ(?)で長時間働くことに慣れたらしいです。
このドキュメンタリーの中でギンズバーグ氏の性格を「内気」と表現するシーンがあるのですが、内なるパワーはとても強靭な人だったのでしょう。
ハーバードのロースクールの男女比率が同等になるのに200年かかった
ギンズバーグ氏のお孫さんもハーバードのロースクールを卒業していて、彼女の代でやっと生徒の男女比が同等になったということ。200年もかかったそうです。
「まともな女性は声をあげないと思われている」という時代に、その先駆者だったギンズバーグの苦労や与えられた劣等感などは計り知れません。
「特別扱いは求めません。男性の皆さん、お願いです。私たちを踏みつけているその足をどけて」
ドキュメンタリーの中で印象的だったのは、奴隷廃止と女性参政権運動で有名なサラ・ムーア・グリムケのこの言葉。
特別扱いは求めません。
サラ・ムーア・グリムケ
男性の皆さん、お願いです。
私たちを踏みつけているその足をどけて
この文章を読むだけで胸が締め付けられます。
数々の性差別の裁判に関わったギンズバーグ氏も、男性判事から失礼だったり、感情を逆撫でられるような発言を言われたそうです。そういうとき彼女はどうしたのでしょうか。その質問に対する回答がとても印象に残りました。
母の教え通り、怒りを静めます。
怒れば自滅するわ。
人に何かを教えるときと同じよ。自分を幼稚園の先生だと考えました。
このアプローチの裏にある考えは、「判事たちは性差別が存在しないと思っているから」だったそうです。
判事たちは女性が直面する問題を理解しないし、問題とも考えていない、そして、女性の役割があると考えているからではないか。そういう考えの人に対して感情で反論しても埒が明かないということを、経験則上理解していたのでしょう。
自分の娘や孫娘がどんな世界で暮らしてほしいか
ギンズバーグ氏が判事や世間に伝えたかったのは、「自分の娘や孫娘がどんな世界で暮らしてほしいか」を考えてみてほしいということ。
ギンズバーグ氏は最高裁の6件の裁判のうち、5件勝訴しました。一歩一歩着実に女性の権利を獲得していきました。
「今の若い女性が働けるのはギンズバーグのおかげ」
そう語るのはギンズバーグ氏のサイトをTumblrで作成したロースクール学生の女性。アメリカでの人気は絶大ですが、彼女の活動の影響はアメリカのみならず、日本にも影響を与えたのではないでしょうか。そう思うと、今私が自由に職業を見つけ、働きたい会社・職に就けていることがとても尊く感じます。女性が平等に働くこと自体が普通だと思えるこの世の中が、いかに多くの人の苦労によって勝ち取られたものなのかを理解できました。
こちらのドキュメンタリーですが、バリバリのキャリアウーマンの武勇伝のような印象は全くなく、全体的に愛情に包まれた作品だと感じました。特に夫であるマーティンのギンズバーグ氏の支えと愛と、互いの信頼は胸がいっぱいになりますし、ギンズバーグ氏の差別をなくそうとする姿も上述した「自分の娘や孫娘がどんな世界で暮らしてほしいか」というような愛情が根源だからなのかもしれません。
遅ればせながら映画『ビリーブ 未来への大逆転』の存在も知ったので、Netflixで観てみようと思います。